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2004.02.21

ロード・オブ・ザ・リング/王の帰還

「ロード・オブ・ザ・リング/王の帰還」をみた。
 すごい。あれを、よくぞここまで映像化できてかつ、映画文脈の中にきっちりと収められたなあ、という感動。前2作をみているなら、絶対にみてほしい。二つの塔で少し違和感を出してしまったけれど、このエンディングがなければ指輪物語ではない。
 原作を読んだのは、ずいぶんと昔になる。よい物語は、その中にたたきこまれるばかりでなく、読み終えるのがこわくて、ふるえてしまう。そういう、私が知っている数少ない物語のひとつ。

 トールキンは寓意性を否定していたけれど、文学にせよ絵画にせよ、作品というものはその時代のどこかを多かれ少なかれ映しているもの。寓意というせまいものではなく、もっと大きな時代の雰囲気だとかそういうもののどこかを、望まなくても映している。それでいてかつ、古びない、普遍に達しているのが、古典たりえる条件のひとつだと思う。

 指輪物語というのは、実に独特だ。西洋的な物語の中に、奇妙な響きを持つ。
 敵は異形で、世界を支配しようとしている。それに対抗するために、持てるすべてを使って結束を固める。大義を示し、鼓舞し、人を動かしまとめる。その一方で、ゲリラ的ともいえる、敵そのものの力を失わせる毒矢を敵の懐深くに撃ちいれる。単純化して少々別の意味でいえば敵の主将もしくは主力を倒す刺客を向かわせる。
 このあたりの物語構造は、ごく普遍的なもの。スターウォーズと比べてもわかると思う。
 その中に、何が独特になるかといえば、指輪の存在だ。
 手に入れたものをむしばんでいく。その力にむしばまれていく存在でありながら、その力を消しにいこうとする、あやうさ。さらにその、弱さ。フロドもスメアゴルも。
 考えてみるといい。スターウォーズでは、フォースというものを身に付けこそすれ、それが悪い力にもなるからといって、フォースの存在を消そうとはしない。そここそが、非常にアメリカ的だと思う。

 弱いものが成し遂げた、弱いものこそが成し遂げられた。その最後の結末は、皮肉にもにたあのシーンでなければならない。
 そしてなお、物語が続く。ここもまた、指輪物語を指輪物語たらしめる、独特で大切な点だ。
 アメリカで作ったら、たぶん、王の戴冠式まででカットされてしまっただろうなと思う。
 この点は、何を比較にもって考えるかといえば、実は水滸伝だ。
 梁山泊に好漢が終結するところをおしまいとするか、その後まであるかで、物語はまったく異なった様相を見せる。どちらも流布しているけれど、梁山泊に好漢が終結するところでおしまいにしてしまったほうが、爽快感強く終わることができるだろう。アメリカ的に。
 でも、その後の物語がついていると、まったく別の感慨を生みだす。
 その後の物語がついているかどうかというのは、指輪物語にとって、そのぐらい大きな意味があるのだ。

 欲をいえば、敵の存在だ。西洋的な物語構造の限界だろうけれど、単純に絶対悪として描かれすぎている。
 フロドやスメアゴルの心がゆれるように、サウロンやその配下も心をゆらすことはないのか?
 それをやってしまうと、こういう物語は成立しなくなる、カタルシスを得させるには無慈悲で強大な敵を努力の末に倒すという装置が必要なのだという物語構造の限界と承知していつつ、少々だけ気にする。

 そして、今という時代。自衛隊の映像がテレビで出陣の映像とだぶるように映されている。
 間違えた物語を描かないように気をつけないと、いつのまにか、愛するものを守るために戦うのが当然だという結束にまとめこまれているだろう。映画は映画にとどまってよし。

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Comments

はじめまして、brosと申します。
戴冠後の長いエピローグは、私にとっても特別な意味があったようです。38歳独身で、今まで旅をしているような人生と感じていたのですが、この三部作を観終えて、無性に旅を終えたくなりました。サム君のように。


Posted by: bros | 2004.02.21 10:42 PM

bros様、はじめまして!

 コメントをありがとうございます。
 サムのように、帰り着く場所を見つけ出せるって、素敵なことだと思います。でもそれも終わりではなく、旅路の途中にすぎないかもしれませんね。いずれにせよ、それらがbros様にとって、すばらしいものでありますように。

Posted by: 翠風 | 2004.02.23 06:31 PM

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